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後遺障害等級認定率 実績48.1%(R2.1.1~R3.10.31)
ありあけ法律事務所の令和2年1月1日から令和3年10月31日までの後遺障害等級認定率の実績は,48.1%(27件中13件)でした。
今後も,後遺障害等級について適切な認定がなされるよう努めてまいります。
安定した状態にある植物状態の被害者の推定余命を簡易生命表所定の期間とし,逸失利益の生活費控除についてはするべきではないとした事例(H10.3.19東京地判)
被害者は植物状態にあるが,非常に安定した状態にあり,余命はH6簡易生命表22歳男子の該当数値である55.43年と推認するのが相当である。これに対して加害者は,自動車事故対策センター作成の調査嘱託回答書等に基づき植物状態患者の平均余命が10年程度であるから被害者の余命も同程度であると主張するが,この資料のサンプル数は極めて少ないこと,被害者に異常があれば直ちに医療機関の処置を受ける態勢が整っていること等より採用出来ない。また,加害者は,被害者は労働能力の再生産に要すべき生活費の支出は必要ないので生活費控除をすべきであると主張する。しかし,生活費は必ずしも労働能力の再生産費だけを内容とするものでなく,被害者は今後も生命維持のための生活費を要するし,雑費の多くは逸失利益中から支出されることが見込まれるので,生活費を控除するのは相当でない。
男子被害者の脾臓喪失による逸失利益算定例(H6.6.27大阪地判)
脾臓の機能は,主に胎児期における赤血球の生産であるが,成人しても老朽化した赤血球の破壊,免疫作用等の機能があること,成人して脾臓を喪失しても肝臓その他の臓器が代替する側面はあるものの,一過性の血小板の増加等の血液の変化があり,長期的にみると敗血症を引き起こした例も報告されていること,一般にも,全身の倦怠し易い状態を生じるものであることが認められる。これらの諸事情に照らすと,現在の現実的な稼働能力はともかく,将来的に考えると,職業選択,選択後の職業における勤務についてある程度の影響のでることが推認されるものの,労働能力喪失率は,原告の卒業予定時から平均15%とするのを相当と認める。
顔面醜状痕を含む併合6級の症状固定時19歳女子の逸失利益を労働能力喪失率25%で67歳まで認めた事例(H25.5.30大阪地判)
被害者の現実の勤務への具体的な支障,就労の不安定性,今後の転職等で受ける可能性のある不利益の存在等を考慮すれば,被害者の労働能力喪失率は醜状痕と右手の神経症状をあわせて25%とするのが相当である。
症状固定時19歳男子の外貌醜状14級の逸失利益について,喪失率5%で67歳まで認定した事例(H24.3.29横浜地判)
被害者が1000人程度の従業員を抱える企業の正社員であり,対人折衝が必要な業務に従事しており,将来的には営業部門等に配属される可能性もあり,被害者の顔の傷が仕事の能率や意欲に影響を与える程度は大きくなるものと考えられ,5%の労働能力喪失を認めるのが相当である。
高校生である被害者の歯牙損傷に係る後遺障害逸失利益計算例(H21.1.30大阪地判)
被害者は,本件事故より14歯以上の歯科補綴が必要になったことが認められる。被害者は現に歯科補綴を受けないまま別の事故により死亡したものであると認められるが,歯の損傷という障害内容に照らすと,仮に被害者が死亡していなければ症状がより改善していたものと認めることができないから,被害者は後遺障害等級10級4号の後遺障害を残していたものと認めることができる。また,後遺障害の内容が歯の欠損等であり,歯科補綴によりある程度機能が回復することなどにも照らすと,後遺障害等級10級4号に該当するからといってただちに27パーセントの労働能力喪失があったとみることには疑問があるので(醜状障害におけると同様),20パーセントの限度で労働能力の喪失を認めることが相当である。
自算会が非該当とした女子学生の後遺障害につき,9級10号に該当するとし,逸失利益につき素因減額を認めなかった事例(H15.5.8東京地判)
被害者は,事故時が高校生で,症状固定時は大学生である。被害者には,特に右手関節の筋力の低下,右上肢から右腰部にかけての知覚鈍麻,具合がよいときは杖なしで足をひきずってゆっくり歩行が可能であるが具合が悪ければ杖を使って歩行できる程度の歩行障害等の後遺障害が残存した。自算会は非該当としたが,被害者の後遺障害等級は,9級10号に該当し,生涯にわたってその労働能力の35%を喪失したと認めるのが相当である。被害者の治療の長期化や後遺障害にも精神的な要因が影響している可能性は考えられるが,鑑定においてその可能性が指摘されるのみで,他の診断書や医師の所見にその旨の記載はなく,被害者の損害につき素因減額をすることはしない。
男子高校生の後遺障害による逸失利益算定に当たり生活費控除の主張を認めなかった事例(H14.1.28名古屋地判)
加害者は,被害者が自宅における療養生活を継続するのであれば,外食費,衣服代,交際費等の支出を免れることを理由に生活費の1割を控除すべきである旨主張するが,被害者は将来おむつ,医療品等の雑貨,通院費用等,一般健常者とは異なる費目による出費が少なくないことが明らかであり,加害者の主張は採用できない。
心的外傷後ストレス障害を後遺障害等級7級と認定した事例(H10.6.8横浜地判)
被害者は本件事故により死の恐怖感を体験したものと認められること,その神経症状および異常行動は心的外傷後ストレス障害の基準を満たしていると判断できること,被害者の心的外傷後ストレス障害の具体的な発症は事故から5年以上経過してからのものであるが自我を脅かさないようにするため外傷体験である本件事故を想起することを心理的に回避していたため,発症が遅延したことは十分にあり得ること,発症直前の手術は腰椎前方固定術の手術であってその拘禁状態等は本件事故を想起させるに足りるものであったため被害者は本件事故を再体験するようになったことからすると,被害者の精神障害を交通事故の外傷体験によって引き起こされた重症の心的外傷後ストレス障害であるという鑑定結果は信用性があり,第7級の神経障害に該当する。
高校生の後遺障害による逸失利益について45%の労働能力喪失を認めた事例(H9.12.24東京地判)
二つの腎臓のうち,一つを失っても生命や健康上何らの問題もないともいえようが,人間の生命,健康が維持できたからといって,労働能力の喪失がないとはいえない。脾臓は,生命の維持に不可欠な臓器ではなく,これを失っても他の臓器がその機能を代行し特別の支障はないと一般的に言われており,被害者が20代であるから脾臓の代替機能の回復も高いといえようが,このことをもって,労働能力の喪失がないとはいえない。なお,後遺障害認定基準は,脾臓と一側の腎臓を同時に失った場合は,併合するのではなく,就労状況や日常生活への支障度を総合し,軽易な労務にしか服し得ない状態に達しないものは8級11号に該当するとしている。これらを総合すると,被害者の労働能力喪失率は,45%とするのが相当
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