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<弁護士・交通事故裁判例>左坐骨神経損傷の治療を米国で受けた被害者について渡米して治療を受ける必要性を認めることは困難であり,日本における治療費と比較して高額であるとして米国での治療費のうち約50%を損害と認めた事例

2015-04-30

 米国のS病院での治療等の内容が当時日本で受けられない内容のものであったことを認めるに足りる証拠はなく,かえって,同病院における治療等は,日本においても一般的である温熱療法,牽引,電気刺激,冷湿布および歩行訓練等の理学療法を中心としたものであったことが認められる。そうすると被害者がわざわざ渡米してS病院で治療を受ける必要性があったと認定することは困難である。また,同病院における治療費は,その内容や期間を前提に日本における治療費と比較すると相当に高額である。これらの事情を総合すると,治療費のうち160万円(概ね5割)の限度で本件事故と損等因果関係のある損害と認めるのが相当である。
(東京地裁平成15年5月8日判決)

<弁護士・交通事故裁判例>診療報酬額について健康保険単価(1点につき10円)の1.5倍(1点につき15円)が事故と相当因果関係のある損害と認めた事例

2015-04-28

 被害者の父は,事故の翌日病院の求めに応じて被保険者証を提示したが,加害者から,任意保険に入っているから安心して治療してほしいと言われていたので,訴外病院事務員にその旨伝えたのであるから,被保険者証を提示した行為をもって被害者に社会保険による診療を受けさせる意思表示であるとみることはできず,自由診療契約が締結されたと認められる。その後,被害者の父は,入院日に遡及しての社会保険の使用を申し出ているが,訴外病院事務員に遡及しての社会保険使用はできないと言われて,自由診療契約解除の意思表示および社会保険による診療を受ける旨の受益の意思表示をしたことを認めるに足りる証拠はない。
 自由診療契約における相当な診療報酬額は,健康保険法の診療報酬体系を一応の基準とし,これに交通事故の特殊性や患者の症状,治療経過等のほか,労災診療算定基準では1点12円とされていること,自由診療の場合,税法上の特別措置の適用が認められていないこと等の諸般の事情を勘案して決定されるべきである。本件の場合は,健康保険の1.5倍をもって相当因果関係のある損害と認めることができる。
(福岡高裁平成8年10月23日判決)

<弁護士・交通事故裁判例>治療間隔が10か月以上空いた後の治療につき,その間被害者が通常の社会生活を営んでいたと推認できること,体調が良かったこと等より事故との相当因果関係を認めなかった事例

2015-04-27

 被害者が入通院した事故発生時から平成2年5月1日までの治療・検査はいずれも本件事故と相当因果関係を認めるのが相当であり,被害者固有の心因的要因により不必要,不相当な治療がなされたことを認めるに足りる証拠はない。尚,加害者は,被害者が自ら脳波検査を希望している点をも挙げて,被害者の心因的要因による影響と指摘するが,頭部痛等が長期にわたって継続していることより,被害者が医師に検査を要請するのは理解しえないわけではなく,右希望から直ちに治療ないしは検査が不必要と判断することは出来ない。
 他方,平成3年3月12日後の治療については,本件事故とは明らかに因果関係のない胃痛ないし胃障害も診断されていること,A病院の最終診療日(平成2年5月1日)からB病院で再度診察を受ける(平成3年3月12日)まで10か月以上の期間が経過していること,この間,被害者は頭痛等の症状で診察,治療を受けた形跡が認められずカラーを外したうえ継続して仕事を含む通常の社会生活を営んでいたと推認されるこ,平成3年の春には被害者の体調が良かったことに照らすと,本件事故との因果関係は認められない。
(東京地裁平成7年9月6日判決)

<弁護士・交通事故裁判例>保険会社による医療機関への治療費支払の打切りと,治療費の認定に関して判断した事例

2015-04-25

 被害者がその客観的原因はともかく,本件事故を契機とする各種の自覚症状のゆえに通院を続けたことは事実というべきであり,この点について被害者に詐病による利得を図る意図があったなどと到底考えることができないから,少なくとも,治療費を本件事故による損害として請求し得ることの可否を論ずる場面においては,被害者の継続的通院をもってそれを責めるのは酷である。
 いわゆる一括支払の合意のもとに毎月「自賠責診療報酬明細書」を送付されながら,事実上中途で支払を止めただけで,その後の診療に何らの意義も伝えなかった保険会社はその本来あるべき責務を十分に果たしたとはいい難い。
 被害者の治療が必要性・合理性の範囲を超えた期間に及んでいると考えるのであれば,直ちにその旨を伝えるなどして爾後の治療費の支払を拒むことを明らかにすべきであった。
 以上のような事情を総合すると,治療費については損害の公平な分担についての信義則上,その全額を本件事故と相当因果関係があるものとして加害者の負担とするのが相当である。
(横浜地裁平成5年8月26日判決)

<弁護士・交通事故裁判例>自由診療での診療報酬について合意を欠く場合は,健康保険法の診療報酬体系(1点単価10円)が原則であることを判示した事例

2015-04-24

 現在では,ほとんどの診療報酬が健康保険法の診療報酬体系により算定されているが,当該体系は,診療報酬に利害関係を有する各界の意見および公益を十分に反映させ,その調和を図りつつ公正妥当に定められている。そのなかで,1点単価を10円とし,診療報酬点数表の点数にこれを乗じて診療報酬額を算定する方法は,一般の診療報酬算定の基準として,合理性を有するものである。
 自由診療において,診療報酬についての合意を欠く場合であっても,原則として診療報酬体系(1点10円)が診療報酬算定の基準となり,ただこれを修正すべき合理的事情が認められる場合には,その事情を考慮して基準に対し,当該事情に即した修正を加え,相当な診療報酬を決定するのが相当と解すべきである。(本件判決は,自賠責診療単価が,公立病院1点20円,その他神戸・阪神地区の病院1点26円から30円であること,他の患者の場合で1点単価25円で診療報酬の支払いを受けたことがあること,等の各事実を総合して,診療報酬体系を修正すべき合理的事情があると認め,1点単価25円で算定した治療費を被害者の損害として認容した。)
(神戸地裁平成4年3月27日判決)

<弁護士・交通事故裁判例>自由診療において診療報酬の合意を欠いた場合に,健康保険法の診療報酬体系を基準として診療報酬額を算定した事例

2015-04-23

 医師の診療行為が必要適切か否かを審査する基準は,診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準に照らし,診療当時の患者の具体的な状況に基づいて客観的に判断して適応を有する病状も存在しないのに,これを存在するとして治療するなど当該治療行為が合理性を欠く診断に基づいてなされたものであるときなど,当該診療行為が医師の有する裁量の範囲を超えたものと認められる場合に限り,必要適切なものとはいえない過剰な診療行為というべきである。
 自由診療においても診療報酬額は,社会通念に従った合理的なものであることが必要であり,交通事故においては,一層そのことが要請される。健康保険法の診療報酬体系には,一般の診療報酬を算定する基準としての合理性も存するのであって,自由診療における診療報酬についての合意を欠く場合の診療報酬額についても,健康保険法の診療報酬体系を基準とし,かつ,ほかにこれを修正すべき合理的な事情が認められる場合には,当該事情を考慮し,それらに即応した修正を加えて相当な診療報酬を決定するのが相当である。

<弁護士・交通事故裁判例>傷害治療費計算の基礎となった1点単価25円の基準を結果的に肯定した事例

2015-04-21

 被害者が訴える症状は,事故後,眼科的訴え,胸部圧迫などの不定愁訴が主となったことが認められるが,一般に傷病に対する訴えには個人差があり,いわゆるむち打症については患者自身でないと理解できない不定愁訴があることも顕著な事実であって格別これを過剰であると非難すべき合理的理由はない。
 診療医の注射,投薬等,施療方法の相当性についても,一般に医師は,医療の専門家としてその施療方法等について相応の裁量幅を有しているというべきであって,特段の事情もないのに,第三者が当該治療方法を不相当と断ずることは困難である。これを本件についてみても,これを過剰診療と断ずる確証はない。
 治療費計算単価は,各府県によって異なるのが実情で,自由診療の場合は,20円の単価が基本だが,他方他府県では30円とする病院も多く存在し,これは突出して高単価であるため,単価25円を採用したものであることが認められる。これらの情況からすると,治療費計算の基礎とした単価25円は,全般的比較としては高いというほかないが,さりとて,これを不当と解することも困難である。
(大阪高裁昭和60年10月29日判決)

<弁護士・交通事故裁判例>健康保険診療を求められた療育取扱機関は,これを拒むことができず,保険診療による義務があると認定された事例

2015-04-20

 国民健康保険の保険者は,被保険者に法定の保険事故が発生した場合は,療養給付を行う義務を負い,その事故の発生原因についてはこれを問わないのが原則であって,その例外は,いわば社会的に避難されるべき泥酔,著しい不行状による交通事故にのみ適用される。
 療養取扱機関は,患者から被保険者証を提出され,保険診療を求められたときは,これを拒むことができず,保険医は,医学的,経済的,社会的に適正な診療を行う義務がある。初診日以降,被保険者証が提出されるまでは,自由診療契約が成立しているというべきであるが,提出後はそれを招来にわたって解除する旨の黙示の意思表示あるものと解される。
 保険診療を受ける権利は,受益者においてこれを招来にわたって放棄することが可能だが,病院事務局長が「保険扱いにすると充分な治療・看護ができない。」旨勧告し,かつ被保険者証を返還されたことが契機となって一旦は切替えを断念した時期があったものの,最終的には,再度被保険者証を提出した本件では,勧告内容が不適切なもので,これに基づく断念の意思は法律上無効というべく,保険診療を受ける権利を放棄したと認めることはできない。

<弁護士・交通事故裁判例>頚椎捻挫の治療として,1週間の入院治療費のみが事故と相当性ある損害と認定された事例

2015-04-17

 A,B,Cらの診療内容と本件事故の態様,その衝撃の部位程度,事故前後の経緯,状況,前認定の診療上の多くの問題点,本件事故当時における頚椎捻挫の一般的治療方針,状況,その他諸事情に照らした場合,Aら3名につきその症状は,通常の頚椎捻挫の域を超えるものとは認めがたく,病院の治療方法,治療期間のうち,特に入院治療の期間が長期にわたっていること,またレオマデックスの点滴静注が施行されていることにつき,医師としての個別の治療行為における裁量的な幅といったものを十分考慮に入れるとしてもなお通常の治療方法,期間としての合理的な必要性を肯認しがたく,前記各認定の諸事情に照らした場合,Aら3名につき,いずれも少なくとも1週間を超えての入院およびレオマデックスの使用については,本件事故との相当因果関係を肯認しがたいものといわざるを得ない。その他の診療内容には過剰診療の感もないではないが,頚椎捻挫の治療行為の特殊性,個別性,また医療行為のある程度の裁量性等を考慮に入れるとき,本件事故との相当因果関係を否定することは困難なものといわざるを得ない。
(広島地裁昭和59年8月31日判決)

<弁護士・交通事故裁判例>病院から保険会社に対する診療費請求につき,1点単価を20円とするのが相当であると判断した事例

2015-04-16

 治療期間は,当初1点単価を25円として計算のうえ保険会社に請求していたところ,入院料だけは1点単価を20円にしてほしい旨保険会社から申入れがあってこれに応じ,さらにその後,一つの事故で被害者が3人もいて,診療費が総額的に高くなるから,その余の分についても1点単価を20円にして請求してもらえれば支払もスムーズにいく旨保険会社から,再度の申入れがあってこれにも応じたところ,そのうち本件事故が保険金詐取を目的とするものであることが明らかになったため保険会社はその支払をせずに現在に至っていることが認められ,かかる経緯からすれば1点単価を20円として計算のうえ治療費額を算出するのが相当である。たとえ,保険指定医の指定を受けていたとしても,かかる特別の事情が認められる以上,1点単価を10円として計算するのが妥当であるとは考えられない。
(神戸地裁昭和59年8月28日判決)

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