<弁護士・交通事故裁判例>診療報酬額について健康保険単価(1点につき10円)の1.5倍(1点につき15円)が事故と相当因果関係のある損害と認めた事例

2015-04-28

 被害者の父は,事故の翌日病院の求めに応じて被保険者証を提示したが,加害者から,任意保険に入っているから安心して治療してほしいと言われていたので,訴外病院事務員にその旨伝えたのであるから,被保険者証を提示した行為をもって被害者に社会保険による診療を受けさせる意思表示であるとみることはできず,自由診療契約が締結されたと認められる。その後,被害者の父は,入院日に遡及しての社会保険の使用を申し出ているが,訴外病院事務員に遡及しての社会保険使用はできないと言われて,自由診療契約解除の意思表示および社会保険による診療を受ける旨の受益の意思表示をしたことを認めるに足りる証拠はない。
 自由診療契約における相当な診療報酬額は,健康保険法の診療報酬体系を一応の基準とし,これに交通事故の特殊性や患者の症状,治療経過等のほか,労災診療算定基準では1点12円とされていること,自由診療の場合,税法上の特別措置の適用が認められていないこと等の諸般の事情を勘案して決定されるべきである。本件の場合は,健康保険の1.5倍をもって相当因果関係のある損害と認めることができる。
(福岡高裁平成8年10月23日判決)

Copyright(c) 2016 ありあけ法律事務所 All Rights Reserved.