<弁護士・交通事故裁判例>事後的には奏功しない結果となった治療について事故との相当因果関係を認めた事例

2015-05-01

 被害者は,低髄液圧症候群の治療処置として,ブラッドパッチの処置を受けたが,被害者の症状は低髄液圧症候群によるものということはできず,本件事故前からの症状が本件事故によって増幅された面は否定されないものの,専ら本件事故によって生じたものとは客観的に認め難いところである。他方,被害者の本件自覚症状は,これが虚偽であると認めるべき資料はなく,また,本件事故が上記症状に全く関わっていないと認め得る資料もない以上,従前からの軽微な追突事故による症状がさらに本件事故による衝撃によって増悪したものと推認するほかないが,その理由を解明し得る資料はない。そこで,被害者としては,医療機関を頼り,医療機関においても,通常の治療で寛解しない症状につき,試行錯誤しながら,その専門的知見に基づいて先進的な治療方法を選択し,インフォームドコンセントの下に治療を実施するのは自然の流れであって,事後的には,奏功しない結果になったからといって,その治療行為が不必要であったものとして,本件事故と治療行為との因果関係を否定することはできない。被害者は,平成16年5月末日まで加療を受け,治療費258万1840円を要したことが認められる。症状固定は上記期間内のどの時点かであったものと推認し得るが,治療費については,これらが不必要であると被害者に認識し得る時点までは相当因果関係を認めるのが相当である。
(岡山地裁平成17年1月20日判決)

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