<弁護士交通事故裁判例>任意保険等は既発生の遅延損害金に充当されるとした事例
2017-07-24
任意保険にせよ自賠責保険にせよ,いずれも被保険者が第三者に対し損害賠償債務を負担することによって被る損害を保険者が填補する責任保険であり,保険会社としては,保険契約または政令で定められた保険金額の限度で保険金を支払う義務を負うところ,被保険者が第三者に対して負担する損害賠償債務の内容は,第三者との関係で定めるものであるから,これに遅延損害金が含まれるのであれば,任意保険金であれ自賠責保険金であれ,既発生の遅延損害金債務に充当されることになると考えられる。したがって,被害者に支払われた任意保険金および自賠責保険金は,損害賠償債務の元本に充当する旨の明示または黙示の合意がない限り,民法491条により,まず既発生の遅延損害金に充当され,その残額が元本に充当されるものと解するのが相当である。本件については,任意保険会社から支払われた152万5575円と自賠責保険会社から支払われた2664万9450円について,損害賠償債務の元本に充当する旨の明示または黙示の合意があったことを認めるに足りる証拠はないから,いずれも民法491条の法定充当によるべきものということになる。
(東京地裁平成15年12月8日判決)