<弁護士交通事故裁判例>被害者の父親の逸失利益等を認めた事例
⓵入力支援機器:21万9870円
証拠および弁論の全趣旨によれば,被害者は,入院中,顎を使ったパソコン操作の訓練を受け,担当医師から退院後のリハビリテーションとして顎を動かして操作するパソコンの利用を勧められ,顎を動かして操作できる入力支援機器を購入し,合計21万9870円を負担したことが認められるところ,被害者の身体機能は首から上しか残ってなく,文字を書くことができないことからすると,顎を使用する入力機器は,被害者が日常生活を営むために必要な器具と認めることができ,かつ,この金額が高額であることを窺わせる事情も見当たらないことからすると,入力支援機器の購入費の全額が相当な損害と認めることができる。
⓶父親の逸失利益:1714万9303円
被害者の父親は,⓵平成17年9月30日,被害者の看護に専念するために稼働先を退職したこと,⓶昭和23年4月12日生まれで,定年(60歳)まで2年7か月の期間を残していたこと,⓷給与収入は年額955万8440円であったことが認められる。被害者の状態は良くなく痙性などもあり,介護人が怪我をすることもあったりして,被害者の介護はかなりの労力を要しており,両親のみならず,時には職業介護人を依頼することも必要であったと認められるから,介護のために父親が稼働先を退職することはやむを得ないことであり,本件においては,父親が退職したことにより収入を失ったことは,本件事故によって生じた損害と言うべきである。ただし,上記損害は実質的には近親者付添看護費であって,近親者付添介護費(日額1万400円)と重複するから,その額は差し引くのが相当であるが,近親者の付添い看護は両親二人で行っていることを考慮すると,通常認められる日額8000円を差し引くのが相当である。
955万8440円×2+955万8440円÷12×7=2469万2636円
2469万2636円-2920万円×(2年+7か月÷12か月)=1714万9303円
(東京地裁平成22年2月12日判決)