<弁護士交通事故裁判例>口頭弁論終結時までに被害者が胃がんで死亡したことにより,現実に被害者が負担を免れることになった将来の介護料等について,損害は事故時に発生するものであるとして死亡の事実を考慮しなかった事例
2016-02-04
事故により傷害を負ったことに基づいて被害者に生じた損害の賠償請求権は,1個のものであり,加害者が負うべき損害の賠償義務は,事故時に発生し,かつ遅滞に陥るものであること,口頭弁論終結時までに被害者が死亡したことにより,現実に被害者側が負担を免れることとなった各損害の費目について事故時において既に発生した損害額から控除するとすれば,かえって口頭弁論終結後に死亡した場合に比して公平を失すること,また,控除するとすれば,死亡により新たに生じたことになる損害を考慮せざるを得なくなり,その結果,損害額の増減が生じ,前記法理に反することになること等に照らして,本件において,損害額の算定につき,被害者の死亡の事実を考慮するのは相当でなく,死亡後の介護費用は損害として認められないとの加害者側の主張は採用しない。
(大阪高裁平成9年11月28日判決)