<弁護士交通事故裁判例>人身傷害補償保険金の請求において訴訟基準差額説を採用しなかった事例

2017-10-19

人傷保険金額の算定方法:被害者側は,過失相殺等により,損害賠償金が減額される場合であっても,被害者側が人傷保険金と損害賠償金により,裁判基準損害額を確保することができるように解する訴訟基準差額説を主張するが,あくまでも支払保険金の算定は,保険契約者と保険会社との契約,すなわち約款に定める計算規定によって定められるべきである。被害者側が主張する訴訟基準差額説は,「約款解釈の不合理性」「簡易迅速に保険金支払額を算定できる傷害保険の性格に反する」「人傷保険の保険料金体系に見合わず保険業界が混乱に陥る」「算定基準も保険会社毎に異なっている」という理由により,約款の解釈論としてはおよそ採用の余地のないものというべきである。
 本件は,計算規定⓶により,人傷基準算出損害額3565万0325円に被害者側の過失相殺を3割として被害者側に支払うべき保険金額は1069万5098円となる。

計算規定⓵:保険金を支払うべき損害の額は,人傷損害額算定基準に従い算出した金額の合計額とする。支払う保険金の額は損害額からすでに取得した損害賠償金等の額を差し引いた額とする。

計算規定⓶:賠償義務者がある場合には,保険金請求権者は,保険会社の同意を得て,人傷損害額算定基準に従い算出した金額のうち,賠償義務者に損害賠償請求すべき損害に係る部分を除いた金額のみを保険金を支払うべき損害の額として請求することができる。

(大阪高裁平成24年6月7日判決)

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