<弁護士・交通事故裁判例>健康保険診療を求められた療育取扱機関は,これを拒むことができず,保険診療による義務があると認定された事例
2015-04-20
国民健康保険の保険者は,被保険者に法定の保険事故が発生した場合は,療養給付を行う義務を負い,その事故の発生原因についてはこれを問わないのが原則であって,その例外は,いわば社会的に避難されるべき泥酔,著しい不行状による交通事故にのみ適用される。
療養取扱機関は,患者から被保険者証を提出され,保険診療を求められたときは,これを拒むことができず,保険医は,医学的,経済的,社会的に適正な診療を行う義務がある。初診日以降,被保険者証が提出されるまでは,自由診療契約が成立しているというべきであるが,提出後はそれを招来にわたって解除する旨の黙示の意思表示あるものと解される。
保険診療を受ける権利は,受益者においてこれを招来にわたって放棄することが可能だが,病院事務局長が「保険扱いにすると充分な治療・看護ができない。」旨勧告し,かつ被保険者証を返還されたことが契機となって一旦は切替えを断念した時期があったものの,最終的には,再度被保険者証を提出した本件では,勧告内容が不適切なもので,これに基づく断念の意思は法律上無効というべく,保険診療を受ける権利を放棄したと認めることはできない。