<弁護士・交通事故裁判例>保険会社による医療機関への治療費支払の打切りと,治療費の認定に関して判断した事例
2015-04-25
被害者がその客観的原因はともかく,本件事故を契機とする各種の自覚症状のゆえに通院を続けたことは事実というべきであり,この点について被害者に詐病による利得を図る意図があったなどと到底考えることができないから,少なくとも,治療費を本件事故による損害として請求し得ることの可否を論ずる場面においては,被害者の継続的通院をもってそれを責めるのは酷である。
いわゆる一括支払の合意のもとに毎月「自賠責診療報酬明細書」を送付されながら,事実上中途で支払を止めただけで,その後の診療に何らの意義も伝えなかった保険会社はその本来あるべき責務を十分に果たしたとはいい難い。
被害者の治療が必要性・合理性の範囲を超えた期間に及んでいると考えるのであれば,直ちにその旨を伝えるなどして爾後の治療費の支払を拒むことを明らかにすべきであった。
以上のような事情を総合すると,治療費については損害の公平な分担についての信義則上,その全額を本件事故と相当因果関係があるものとして加害者の負担とするのが相当である。
(横浜地裁平成5年8月26日判決)