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自算会が非該当とした女子学生の後遺障害につき,9級10号に該当するとし,逸失利益につき素因減額を認めなかった事例(H15.5.8東京地判)
被害者は,事故時が高校生で,症状固定時は大学生である。被害者には,特に右手関節の筋力の低下,右上肢から右腰部にかけての知覚鈍麻,具合がよいときは杖なしで足をひきずってゆっくり歩行が可能であるが具合が悪ければ杖を使って歩行できる程度の歩行障害等の後遺障害が残存した。自算会は非該当としたが,被害者の後遺障害等級は,9級10号に該当し,生涯にわたってその労働能力の35%を喪失したと認めるのが相当である。被害者の治療の長期化や後遺障害にも精神的な要因が影響している可能性は考えられるが,鑑定においてその可能性が指摘されるのみで,他の診断書や医師の所見にその旨の記載はなく,被害者の損害につき素因減額をすることはしない。
男子高校生の後遺障害による逸失利益算定に当たり生活費控除の主張を認めなかった事例(H14.1.28名古屋地判)
加害者は,被害者が自宅における療養生活を継続するのであれば,外食費,衣服代,交際費等の支出を免れることを理由に生活費の1割を控除すべきである旨主張するが,被害者は将来おむつ,医療品等の雑貨,通院費用等,一般健常者とは異なる費目による出費が少なくないことが明らかであり,加害者の主張は採用できない。
心的外傷後ストレス障害を後遺障害等級7級と認定した事例(H10.6.8横浜地判)
被害者は本件事故により死の恐怖感を体験したものと認められること,その神経症状および異常行動は心的外傷後ストレス障害の基準を満たしていると判断できること,被害者の心的外傷後ストレス障害の具体的な発症は事故から5年以上経過してからのものであるが自我を脅かさないようにするため外傷体験である本件事故を想起することを心理的に回避していたため,発症が遅延したことは十分にあり得ること,発症直前の手術は腰椎前方固定術の手術であってその拘禁状態等は本件事故を想起させるに足りるものであったため被害者は本件事故を再体験するようになったことからすると,被害者の精神障害を交通事故の外傷体験によって引き起こされた重症の心的外傷後ストレス障害であるという鑑定結果は信用性があり,第7級の神経障害に該当する。
高校生の後遺障害による逸失利益について45%の労働能力喪失を認めた事例(H9.12.24東京地判)
二つの腎臓のうち,一つを失っても生命や健康上何らの問題もないともいえようが,人間の生命,健康が維持できたからといって,労働能力の喪失がないとはいえない。脾臓は,生命の維持に不可欠な臓器ではなく,これを失っても他の臓器がその機能を代行し特別の支障はないと一般的に言われており,被害者が20代であるから脾臓の代替機能の回復も高いといえようが,このことをもって,労働能力の喪失がないとはいえない。なお,後遺障害認定基準は,脾臓と一側の腎臓を同時に失った場合は,併合するのではなく,就労状況や日常生活への支障度を総合し,軽易な労務にしか服し得ない状態に達しないものは8級11号に該当するとしている。これらを総合すると,被害者の労働能力喪失率は,45%とするのが相当
後遺障害による逸失利益について15%の労働能力喪失を認めた事例(H8.1.19神戸地判)
被害者には,本件事故により併合7級という相当重い後遺障害が残ったが,大学卒業後も資格を目指して勉強し,数年間収入は得られないがいずれ資格を取得すると後遺障害による支障が相当残るものの収入にはあまり影響がないと予測されることや後遺障害の内容,程度,年齢等を考慮するとH6.4から67歳までの44年間,15%程度の労働能力を喪失したとみるのが相当である。
別件交通事故によって死亡した被害者について,後遺障害による逸失利益の発生が中断することはないとして死亡後の逸失利益を認めた事例(H5.9.19東京高判)
障害等級12級の後遺障害を負った被害者が,別件交通事故で死亡しても,後遺障害による逸失利益の発生が中断することはないとして,死亡後の逸失利益を認定(被害者は本件事故に基づく後遺障害により右14%の労働能力を喪失したことにより,本件事故と相当因果関係のある損害として逸失利益が生じたものであって,別件事故による死亡ではこれを除いた残りの労働能力が失われたことになるのであるから,別の交通事故によって死亡したとしても右逸失利益の発生が中断するということはできないと判断)
事故後,高校を退学してスーパーに勤務をしていた被害者について,67歳まで79%の労働能力喪失を認めた事例(H5.5.21神戸地判)
高校を退学後,被害者はスーパーでパート勤務をしているものの,同人に対する雇用の実態は障害者福祉を目的としたものであり,同人に対する給与も,健常者の労働の対価というよりはむしろ社会福祉的要素がが強いものであることなどを勘案して,18歳から67歳に達するまで79%の労働能力を喪失しているものと判断
中学3年生女子の高次脳機能障害について賃金センサス学歴系女性全年齢平均賃金で認めた事例(H17.11.25大阪地判)
被害者は本件事故により頭部外傷Ⅲ型等の傷害を負い,当初意識障害の症状が起きていたこと,事故後,動作性知能指数の低下,軽度の物忘れ症状,集中力の低下などがみられること,自賠責保険における後遺障害認定で9級4号の認定がなされていることに鑑みれば,原告の後遺障害は,神経系統の機能または精神に障害を残し,服することができる労務が相当な程度に制限されるものとして,9級10号に該当する。なお,上記の後遺障害は頭部に外傷を負ったことによる器質的な病変によってもたらされたもので,事故当時あるいは事故後原告に現れている非器質的の精神症状を評価に加えたものではないから,被害者が本件事故当時,既に心身症と診断されていたとしても,判断に影響を与えない。また,被害者の前頭部の生え際に4cmの線状痕が残ったことは前記のとおりであるが,労災の認定基準における外ぼうの醜状とは,頭部については鶏卵大面以上の瘢痕等をいうとされているところ,原告の線状痕はこの基準を満たしていないこと,ピンで髪を留めれば隠すことができる傷痕であることに鑑みれば,慰謝料の認定に当たって考慮することは別として,前記認定を左右するに足りない。
中学生の脾臓摘出による後遺障害の逸失利益について,18歳から67歳までの49年間にわたる労働能力喪失を認めた事例(H5.8.6神戸地判)
被害者は,就労可能となる満18歳に達した後においても,本件後遺障害としての前記症状が継続し,それにより同人の選択する職業の種類,条件等が制約されるものと推認することができ,これにいわゆる労働能力喪失表を参酌して考えると,同人は,満18歳から67歳までの49年間にわたって,その労働能力を40%喪失することになると認めるのが相当であると判示。
14級5号の症状固定時8歳男子の逸失利益について賃金センサス男子全年齢平均賃金を基礎として労働能力喪失率5%で49年間認めた事例(H26.8.27東京地判)
左足背部の植皮術後の瘢痕について14級5号の認定を受けた。被害者の年齢に照らし,将来的に肢体の美観が就労に影響する職業に就く可能性は十分にあるというべきである。被害者の後遺障害は左足の側背部の瘢痕であり,目立つ場所にあるとはいえないものの,服装如何によっては外部から見える場所にあることを考慮すれば,5%の限度で,後遺障害による就労の機会喪失および就労上の不利益を受ける蓋然性があると認めるのが相当である。
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