言葉のセクハラ 厳格な処分を支持した最高裁
度を越した従業員のセクハラ発言に、企業が厳格に対応するのはもっともだ――。最高裁の明快なメッセージだろう。
女性従業員にセクハラ発言を繰り返した男性社員2人に対する懲戒処分を巡り、最高裁は処分を妥当だとする判決を言い渡した。
大阪の水族館運営会社で課長代理を務めていた2人は、部下の女性に「結婚もせんでこんな所で何してんの。親泣くで」「夜の仕事とかせえへんのか?」といった言葉を度々発した。
露骨な性的話題を口にすることもあったという。
会社は、2人を30日間と10日間の出勤停止処分としたうえで、係長に降格させた。
最高裁は、「強い不快感や嫌悪感、屈辱感を与え、執務環境を著しく害した」と、一連の発言の悪質性を認定した。
体への接触の有無にかかわらず、性的な言動で相手を不快にさせることは許されない。そんな警告と捉えることもできる。
1審の大阪地裁は、会社の処分を支持した。2審の大阪高裁は逆に、処分を無効と判断した。
高裁は、女性が明確に抗議しなかったことから、2人は自分たちの発言が許容されていると受け止めたと認定した。これを踏まえ、処分が重すぎると結論付けた。
セクハラへの理解を欠いた判断だったと言わざるを得ない。
最高裁は、セクハラの被害者について、「職場の人間関係の悪化などを懸念し、抗議や抵抗、会社への申告を 躊躇 ちゅうちょすることが少なくない」という点を重視した。実態を的確に捉えている。
ハラスメント被害に対し、「我慢した」「諦めて仕事を辞めた」という女性は、それぞれ3割前後に上るという調査結果もある。
2人は、職場のセクハラ防止に努めるべき管理職の立場にあった。それにもかかわらず、悪質な発言は1年余りにも及んだ。
こうした状況を考えれば、最高裁が、処分無効を求めた2人の訴えを退けたのは、当然である。
2007年に施行された改正男女雇用機会均等法は、相談体制の整備など、必要な措置を講じるよう事業主に義務付けた。運用指針では、厳正な対処を就業規則に定めることも求めている。積極的に取り組んでいる企業は多い。
だが、言葉のセクハラを軽視する風潮は、一部に根強く残っているのも事実だろう。最高裁判決を機に、セクハラに対する意識改革をさらに進めたい。
(読売新聞より)