<新商標>音や色の出願、1週間で500件
企業のテレビCMや製品に使われる音や色彩が今月から新たに商標として登録できるようになり、特許庁への出願が1週間で約500件に達した。消費者がどこかで目や耳にするなじみ深いものが多く、企業は商標登録で模倣を防ぐとともに、ブランド戦略の一層の多様化を図る。
商標登録の対象はこれまで、文字や図形などに限られていたが、4月1日施行の改正商標法で、「音」「色」、映像上のロゴマークの「動き」「ホログラム」、製品に付けるマークの「位置」が追加された。特許庁によると、初日の1日だけで471件の申請があり、このうち音が144件、色が190件。登録されれば、独占的な使用権が認められる上、政府間協定により、外国への出願手続きも簡単になる。
久光製薬は約25年前からテレビCMなどで使っている「ヒ・サ・ミ・ツ♪」のメロディーなどを出願した。すでに世界約50カ国で同様の商標を出願済み。米国やオーストラリアなどでは登録されており、日本でも音や色を登録できるよう政府に働きかけてきた。堤信夫・取締役法務部長は「商標はお客様へ情報を伝える手段。新タイプの商標によって権利が安心して使えるようになる」と期待を寄せる。
江崎グリコは、テレビCMで1992年から使っている「グ・リ・コ♪」の旋律を、大幸薬品も正露丸のテレビCMで使われる「パッパラパッパ♪」で始まるラッパのメロディーをそれぞれ出願した。
玩具大手「タカラトミー」は列車を走らせて遊ぶおもちゃ「プラレール」の線路の色の青を出願。同社は59年の発売時からレールにこの色を使っており、広報担当者は「プラレールといえば青色。登録でブランドイメージをさらに向上させたい」と強調する。セブン-イレブン・ジャパンも、コンビニエンスストアの店舗に使うオレンジ、緑、赤の3色の組み合わせを出願した。特許庁の審査を経て、数カ月後に順次登録される見通しだ。
特許庁の担当者は「世界展開する企業から、『国内でも新しい商標を』との声が強かった。新制度をきっかけに、企業の商標への関心がより高まるのでは」と話す。一方、法改正の検討段階では、色や音の商標登録が、ほかの企業の広告、宣伝活動を制約しかねないとの懸念の声も上がっていた。権利をしっかり保護しつつ、競争も妨げない審査を特許庁が進められるかも問われることになる。
(毎日新聞より)