安定した状態にある植物状態の被害者の推定余命を簡易生命表所定の期間とし,逸失利益の生活費控除についてはするべきではないとした事例(H10.3.19東京地判)
2021-11-08
被害者は植物状態にあるが,非常に安定した状態にあり,余命はH6簡易生命表22歳男子の該当数値である55.43年と推認するのが相当である。これに対して加害者は,自動車事故対策センター作成の調査嘱託回答書等に基づき植物状態患者の平均余命が10年程度であるから被害者の余命も同程度であると主張するが,この資料のサンプル数は極めて少ないこと,被害者に異常があれば直ちに医療機関の処置を受ける態勢が整っていること等より採用出来ない。また,加害者は,被害者は労働能力の再生産に要すべき生活費の支出は必要ないので生活費控除をすべきであると主張する。しかし,生活費は必ずしも労働能力の再生産費だけを内容とするものでなく,被害者は今後も生命維持のための生活費を要するし,雑費の多くは逸失利益中から支出されることが見込まれるので,生活費を控除するのは相当でない。
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