<弁護士・交通事故裁判例>低髄液圧症候群の治療費について事故と因果関係が認められないとしながら,被害者の主張する治療費のほぼ全額を損害と認めた事例

2015-05-07

 問題は,被害者に低髄液圧症候群,外傷性脊椎髄液漏の傷害が認められるか否かであるが,最も典型的な症状であるところの起立性頭痛は被害者には見られず,ブラッドパッチ療法も見るべき効果はなく,被害者に脊椎髄液漏があるとするにはなお合理的な疑問が残るものと言わなければならない。被害者は,本件事故により,頚椎捻挫(外傷性頚部症候群)のほか脊椎髄液漏の傷害を負ったとして治療を受けてきたものであるところ,被害者には低髄液圧症候群は認められず,その主張の症状は頚椎捻挫(外傷性頚部症候群)によるものであると考えるべきであるから,低髄液圧症候群の治療費は,本件事故と相当因果関係が認められない筋合いである。しかしながら,被害者は,自らの症状を訴えて,各医療機関を受診しただけであって,低髄液圧症候群との診断をしてその治療をしたのは医療機関側の判断と責任によるものであるから,被害者が現にその関係の治療費を支払っている以上,それを安易に減額することは相当ではない。
(福岡地裁行橋支部平成17年2月22日判決)

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